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集落支援センター
今後、小規模高齢化が進行する中山間地域においては、地縁型の自治組織は機能しなくなることが予想され、こうした地域には地域経営の新しい仕組みが必要となるであろう。
集落支援センターは機動力のある少数精鋭の事業体であり、自治会や集落の活動を要請に応じて支援する地域の便利屋さん的な立場にある。高齢者世帯や集落からの支援依頼があったとき、まず介護サービス、ヘルパー派遣など既存の制度で対応できるかどうか社会福祉協議会あるいは地域の民生委員と連絡相談しながら進める。また行政的に解決できるものは役場担当課や地域公民館等の公的機関につなげるという中間的窓口機能も果たせるような位置づけができる。ビジターセンターとしての機能をもつことから地域の観光協会とも密接な関係をもつが、将来的には観光協会事務局機能そのものを集落支援センターが担うことも視野に入れておく必要がある。その他農協、商工会、漁協、森林組合等さまざまな既存組織との連携を図っていく総合調整機能を果たしていくことが求められる。
最大の目標は「安心・充実した暮らしを実現する」ということである。そのためには、集落が小規模高齢化して様々な支障がでてきても、集落活動や暮らしをきちんとサポートしていく機能が、まず第一となる。
そして中山間地域の共通の課題でもある農地をはじめ、家や里山のたたずまいを維持管理していく機能もなんとか果たしていかなければならない。
ここまでは言わば「守り」の対策であるが、将来の展望を見いだすためには、積極的に「打って出る」対策も必要である。それが三番目の都市交流推進機能である。ふるさと出身者をはじめ都市の活動団体とも連携しながら、地域資源を活用した事業を展開していくためには、交流推進機能は欠かせない。こうした分野の仕事は、縦割り行政の仕組みの中で、時を変え、品を変えて地域に下りてくる。ところが現場では、健康福祉も農林も観光も複層的に絡み合って動いている。こうした課題を総合的に調整する機能が最後の項目に掲げた総合事務局機能である。
「集落支援センター」が、地域の様々な住民組織、老人会連合会、地区福祉協議会、集落営農法人、放課後児童クラブ、集会や自治振興会などの総合事務局としての機能を持たせることができれば、今、地域が直面している様々な課題の多くが解決できるであろう。例えば、中山間地域等直接支払制度や農地・水・環境保全向上対策事業に取り組んでいくためには、集落ごとに事業管理する事務局担当を置かなければならない仕組みになっている。小規模高齢化した集落では、繁雑な事務を受けてくれる者がいないため、やむなく事業を放棄してしまっていることが多い。こうした事務を総合的に引き受ける「集落支援センター」があれば、農林水産省所管の事業だけでなく総務省や環境省など様々な省庁・財団の支援を地域のいろいろな活動団体が受けやすくなる。
「集落支援センター」の運営には、行政との連携が欠かせない。生活支援や地域運営の精度を上げることはもちろん、安定的運営のためには行政からのアウトソーシング(業務委託)が重要となる。公権力を行使する事業や業務の停滞が住民生活等に直接著しい影響がある事業などは自治体が直接実施する必要がある。しかし、住民のために必要であるが、必ずしも行政が直接実施する必要のない事業、公共を持った民間が行うことでより即時性や密着性が発揮され効果が高いと期待させる事業、さまざまな制約から行政が実施することが限界となっている事業もある。例えば、行政関係の調査(国勢調査、農業センサス・商工業統計等)や広報、公文書の配布作業などである。こうした事業を受託することにより「集落支援センター」の安定的運営を図る。また、過疎化した地域でいち早く撤退するのが農協や金融機関の支所である。従って、「集落支援センター」には、役場・金融・連絡機能を付加することが重要となる。
集落支援センターの運営目的と必要な機能
集落支援センターの機能と役割
「集落支援センター」の機能・活動分野を整理すると、理想的な型としては、下図のように整理できる。これらの機能のうち最も重要になるのが、中央に位置する「総合事務局機能」である。小規模高齢化が進む集落では、集落における地域運営を地域住民のみに委ねることはもはや困難となってきている。そうした集落の運営には、地域課題を専門的に扱い、地域運営を一手に担うコーディネーである地域マネージャーが必要となる。地域再生への意欲と専門的知識を持った地域マネージャーが核となり、役場や社協、観光協会、農協、森林組合、企業などの諸団体、さらには都市住民、NPO、有識者等の多様な主体の参画を図り、それらの力を有機的に結びつける仕掛けができる人材を「集落支援センター」に配置できるかどうかが大きなカギを握る。
次に重要となるのが、高齢世帯支援機能、人材登録派遣機能である。また、地域住民サロン機能、里山保全管理機能、役場・金融・連絡機能は、高齢者の生活支援にとっては重要な機能である。
宿泊研修機能、交流訪問者受付機能、産直運営機能は、「集落支援センター」の自立的・継続的運営を考える上で重要な機能である。過疎化し高齢化した地域における可能性のあるビジネスは、グリーン・ツーリズムなどのニューツーリズムである。ニューツーリズムの受け皿を整備することは、単にお金が儲かるだけではなく、その地域の誇りを喚起し、そこに生きる希望を蘇らせる可能性があるため、重視するべきである。
声かけ・安否確認、送迎支援、有害鳥獣対策、冬季の除雪支援、ふるさと応援団の組織化をめざした出身者の会との連携など、すぐにでもやらなければならないこと、やれそうなものから始めて、活動分野を少しずつ拡げていくという段階的な進め方が望ましいであろう。
このような機能を持った「集落支援センター」が、地域のつながりが強い小学校区単位に一つあれば、様々な課題を解決できると考える。対象となる世帯は、400世帯程度で、営業種目の種類(支援メニュー)や量にもよるが、専従スタッフとして、最低3人を必要とする。一人は、地域の事情や住民をよく知っている熟年者、これに、30〜50歳の行動力のある企画担当者(地域マネージャー)、財務・会計管理もできる事務担当者が加わる。また、非常勤スタッフとして、地域住民の中から公募した人材登録者に必要に応じて参画してもらう。活動の継続性にとって専従スタッフの労働条件は重要となる。社会保障制度も完備した、きちんとした雇用条件で勤務してもらうことが望ましい。
集落支援センターの自立的運営
地域の遊休施設を活用して「集落支援センター」を開設し、3人の専従体制で運営することを前提に、必要となる資金を試算してみる。専従者3人の人件費は、所長:24万円/月、地域マネージャー:32万円/月、事務員:16万円/月として、臨時賃金、法定福利も含めて、年間で約1,100万円と見積もる。事務所の電気、ガス、水道等の固定的な経費が約40万円、これにスタッフの交通費、事務用品等の消耗品費、機器等の購入・レンタルを入れると合わせて約1,300万円の資金が必要となる。
これに対し、どのような収入が見込めるか、営業範囲とスケールメリットが限られる中山間地域で3人の専従スタッフを雇用する事業所を経営することは相当難しい。あえて収入の見込める営業分野を挙げると、一つは「ふるさと米等の販売」である。12トンの売り上げで粗収入200万円を目標とする。また、「グリーン・ツーリズム事業の展開」により、年間千人を受け入れることができれば約100万円の手数料収入が期待できる。さらに、「中山間地域等直接支払制度の事務代行」を請け負えば、100ha分で10%の約200万円の手数料が得られるだろう。これ以外に、地域づくり計画のとりまとめ業務など、これまで行政が都市のコンサルタント会社に委託していた調査業務などにも取り組んで、500万円の収入があったとしても、まだ360万円程度が不足する。
こうした試算の結果、不足分をどのように補うかということが「集落支援センター」の持続的な運営のための最大の課題となる。「集落支援センター」の安定的な運営を実現するためには、相当の営業努力を必要とする。物品販売やツーリズム企画の売上など、見通しがつかない部分もある。収入で大きな割合を占める国県町からの業務を受託するには地域計画コンサルタントの経験をもったスタッフが必要で、年間2〜3件の委託業務をこなさないと安定的収入は難しい。
自立的運営のためのアウトソーシング